2009.11.30.
今月は読書の秋などと言って結構な数の本を読んだが、乱読もいいところ。英会話の勉強会で「My Favorite Books」などというテーマの回があったためにいろいろ考えめぐらせたということもあったが、他にも理由がある。

まずは村上春樹の短編集「めくらやなぎと眠る女」の発売。「象の消滅」に続いて、ニュー・ヨークが選んだ短編集というもの。この中には書き下ろしの「蟹」や、推敲バージョンの「ハンティング・ナイフ」などが含まれる。表題は「めくらやなぎと眠る女」だが、収録されているのは「レキシントンの幽霊」の方の「めくらやなぎと、眠る女」。「蟹」は読んで少々後悔している。しばらく蟹は食べられそうにない。もう一生食べられないかもしれない。別に特別好きでも嫌いでもなかったが、もう食べられないかも...。この人のゾッとする後味のタイプの話は、本当に怖い。夢に出てきそうな気がしてしまう。カミサンには絶対に読ませられない。

もう一つの大きな理由として、ジャック・ケルアックの没後40年ということで、命日の10月21日に合わせてリリースされたドキュメンタリー・フィルム「ONE FAST MOVE OR I'M GONE : KEROUAC'S BIG SUR」の存在を知ってしまい、その周辺事情をいろいろ調べたりしていたのだ。ここで、サントラを任せられたジェイ・ファーラーというミュージシャンが気になってしまい、いろいろ調べて彼のバンドSON VOLT やその源流UNCLE TUPELO、そしてそこから派生したWILCO まで行き着いてしまい、今はその辺の音楽にハマっているのだ。ついでにケルアックの「路上」と「孤独な旅人」を再度読み返したりもした。何回目かな...? 結局今月は35冊ほど読んだことになるか...。ケルアックは文体が饒舌で、特別好きな方ではない。原文で読んだわけではないので、あまりはっきりしたことは言えないが、それでも1960年代70年代のミュージシャンなど、大きな影響を与えられたビート・ジェネレーション、ビートニクスを読まずしてその時代の音楽は語れないので、自分のような人間にとっては必読ということになる。文章が持つスピード感や内容の刺激という点では、人気作家になってしまったことも理解はできる。ドラッグ・カルチャーとは切っても切れなさそうだが、その辺がまた古さを感じさせたりもする。結局その後のたびについて書いた「BIG SUR」は暗く、陰鬱な文章になってしまうのだが、ジェイ・ファーラー等のサントラがまた暗くて、その辺の雰囲気をしっかり表現しているのである。

旅に出たいという気にさせるという点では、沢木耕太郎や景山民夫の方がはるかに上を行っている。ロード・ムーヴィー的な内容と相俟って、描写の細かさゆえに香辛料の香りがしてきそうなリアリティと、自分より少し上の世代ということで、憧れを持って接した同時代感覚が全編に散りばめられているような状態なのだ。その感覚があまりにも強烈すぎて、心がヒリヒリしてしまう。読み進むのに、他のものと比べて、少々勇気を必要とする。

そして、最近、こういった古い小説を読むたびに思うのだが、やはりここ10年ほどの社会の変化があまりにも大きすぎて、アップデート不能な部分があり、必然的なエクスキューズが要るのだ。つまり、インターネットや携帯電話があまりにも短時間で社会全体に浸透してしまったために、それ以前と以後とでは、まったく別世界のように思えてならないのである。例えばケルアックの世界は、十分に古い話であるということが理解できているために、こういったエクスキューズも小さくて済むのだが、沢木さんや景山さんや現代人としての村上さんは、その辺の事情を意識しながら読まないと、ヘンな古さを嗅ぎ取ってしまうのである。別に現代を舞台にしてインターネットやケータイに触れなくても小説が成り立つこともあろうが、その少し前の世界では解決不能だった物事が、現在ではいとも簡単に解決してしまうことも多いのである。特に恋人同士のすれ違いなど、ケータイの有無であり様がまるで違うのではなかろうか。まあ、そんなどうでもいい事ばかり考えている。

親父様がまた入院した...といったところで、何もしてあげられるわけではない。本ばかり読んでいるのも、結局のところ、現実逃避なのかもしれない。
2009.11.22.
ちょいとドライヴに行ってきた。ごっそり本をバッグに詰め込んで、温泉宿でのんびりというところだ。
まずは、仙石原の長安寺。羅漢像がいっぱいある紅葉の名所。紅葉は盛りを過ぎていたが、これもまたよしといった風情であった。
すすき原も今回はいまいち。前日大雨が降ったので致し方ない。当日晴れていただけでもラッキーというべきか。 
今回、この沼津方面の夕景が最高だったかも。
今回のお宿は、蓬莱洋館ヴィラ・デル・ソル。紀州徳川侯爵が建てた南葵文庫という日本最初の私設図書館を移築改修してレストラン等にしている。温泉も最高で言う事なし。 なかなか素晴らしい内装。料理は魚介中心で軽め。グラスワインはシャトー・ボーモンであった。夜は暗くて写真が撮れるものではなかった。 このサンルームが、妙に懐かしい気分になって、心和んでしまった。 
遅めにチェックアウトし、まず南下。伊東で刺身定食なんぞ食す。 スカイラインに上り、しばし高速ドライヴを堪能。ピーカン。  帰りは事故渋滞を避けて、東名川崎で下りて第三京浜にのり直し、目黒通り経由で帰ってきた。 
2009.11.16.
ノラ・ジョーンズのニュー・アルバムがリリースされた。かなり回復したようで、一聴相当にできがよいように思われる。今回は、アナログ盤の方が先に届いたのだが、曲の出来にしろ、音質にしろ、もう大満足である。

そこで、大きなジャケットをシゲシゲ眺めていて、ふと気が付いた。HMVなどのサイトに載っているものとジャケットが違うのだ。タイトルの下に書かれている葉っぱの形が微妙に異なるのである。左がウチにあるもの。右がウェブサイトから拝借してきたもの。英米とかで違うのか、デジタルとアナログで違うのか、・・・気になるでないのさ。よく見たら文字も違うなー。何なのさ、これ? 
2009.11.15.
読書の秋である。今月に入ってから、やはり一気に読書量は増えている。
これは、ここしばらくで集まってきた村上春樹が翻訳している空飛び猫シリーズの絵本。自分は英会話の関係で週2回程度のメルマガも書いているのだが、そこで村上春樹関連の話題に触れたことがあり、今月に入ってから、いろいろ村上春樹の本を再読していたのである。
ちなみにこちらは、Amazonで見つけた原書。この絵本は絵も好きなので、この原書が手に入ったのは嬉しかった。
村上春樹訳の絵本といえば、この「ポテト・スープが大好きな猫」もオススメ。

ちなみに、絵本ではないが、ハリポタに登場する作中作品「吟遊詩人ビードルの物語」の翻訳版も手に入れた。作者J.K.ローリングが手書きして、7冊だけコピーをつくり、6冊は親しい友人に配り、1冊をオークションにかけて、Amazonが約4億5千万円で落札し、その収益は世界中の両親を亡くした子供たちのための慈善団体に寄付されたということ。これはカミサンへのプレゼント。


その他にも、村上春樹に関しては、下のようなものを読み返したりした。
「意味がなければスイングはない」は初めて。この人、本当にジャズが好きだからネエ...。「沈黙」は案外知られていないが、全国学校図書館協議会というところから出ている、集団読書テキストというもの。巻末に村上春樹の年表がついている。これ、村上春樹の研究家のサイトって世の中にいくつもあるが、大抵漏れている。まあ、短編集「レキシントンの幽霊」にも収録されているので、いいんだろうけど、単体で売っているからにはネェ...、リストアップしてやって欲しいやね。
さて、音楽関連では、こんなのも読んでいる。この人も元はスイングジャーナルの編集長だった人だから、ジャズの方が本業だろうが、結構ロックに関するものも書いている。圧倒的な文章力、何に関して書いても、この人なら読む価値ありといったところだ。それにしても、「ミック・ジャガーは60歳で何を歌ったか」は圧巻である。決して全盛期を越えられないと分かっていても、現役として活動を続ける老ロッカーたちを通して見せる考察は、・・・必読。
最近は洋物も読んでいる。「ボーン・コレクター」で有名なジェフリー・ディーヴァーの「クリスマス・プレゼント」は、長編中心のこの作家の唯一の短編集。しかし、短編専門作家のもののように面白い。

ノルウェー人エリック・フォスネス・ハンセンの「旅の終わりの音楽」は、タイトルに惹かれて買ったものだが、内容はタイタニック号に乗り合わせてしまった船上の音楽家たちの物語。
ここしばらくで面白かった本はこんなところ。こんなものを読んで、ボーッといろいろ考えいることが、最近は面白くていけない。「成功はゴミ箱の中に」はレイ・クロックの自伝だが、この人物はマクドナルドを世界的なチェーン店にした人で、ベンチャー企業経営者にとって神様のような人だとか。この本、意外なことに野地秩嘉さんが監修している。付録で孫正義さんと柳井正さんの対談が載っていて、これがまた面白いんだな。
最近英会話の勉強会で、「サービスの達人たち」という本を課題図書的に使った野地さんの新しい本がでた。「小沢選挙に学ぶ人を動かす力」とは、また随分直球できたもんだ。この本はこれから読む。「企画書は1行」も、ビジネス書として読まなければ案外面白い。
2009.11.09.

 
今月27日だか28日だかに、村上春樹の「めくらやなぎと眠る女」という短編集が発売される。これ、情報を得た直後に予約を入れた。猛烈に興味があるタイトルなのである。とにかく今年は「1Q84」の年だったわけで、しかも第3部を執筆中ということだから、まだしばらくはあの不思議な世界に付き合わなければいけないようだが、どうにも理解し難いストーリー展開といい、唐突な結末といい、どうも納得できない。村上作品の中でも?マーク度が最も高かった。とにかく自分の場合、初期の3部作「風の歌を聴け」「1973年のピンボール」「羊をめぐる冒険」が大好きで、その3冊があるがために村上春樹を読み続けているのである。しかも彼の場合、圧倒的に短編の方が面白いと感ずるのである。その中でも「蛍・納屋を焼く・その他の短編」という1984年頃に出たものが大好きなのである。そして、この短編集に「めくらやなぎと眠る女」は収録されているのだ。

とにかく興味深いのは、「蛍・納屋を焼く・その他の短編」に収録されている「蛍」の作品世界を広げてできたのが「ノルウェイの森」なわけで、「めくらやなぎと眠る女」も「ノルウェイの森」の中で、過去のエピソードとして引用されているのだ。それから12年後、「めくらやなぎと眠る女」は、大幅に書き直されて「レキシントンの幽霊」という短編集に収録されることになるんだな。このときは区別をするためめか「めくらやなぎと、眠る女」というタイトルになっている。この「、」つきの書き直し版の方が、「ノルウェイの森」との関連性は深まっている。大袈裟に言うと「諸行無常」ということになるが、全ての人間に平等に訪れる死というものと、不平等極まりない人生の有り様を、残酷とも言えるほど静かなタッチで描いていて、ゾッとさせられるのである。ここで作者は、読者に深い考察を促すわけで、その世界観は、凝縮度の高い短編集の方がより濃密なのである。

「レキシントンの幽霊」は、その他にも、ショート・ヴァージョンが存在する短編がいくつか収録されていたりして、彼の作品群のなかではアップデート・パッケージのようなものなので、要注意なのである。しかし、そこから13年経って、「めくらやなぎと眠る女」は、短編集の表題となって再び蘇る。さらなるアップデートがあるのかはどこにも触れられていないが、いったいどちらのヴァージョンが収録されているのやら。この短編集、本邦初登場の作品も収録されるということで、「蟹」というこの作品、「回転木馬のデッド・ヒート」に収録されていた名作「野球場」に登場した作中小説を、実際の作品として書き上げたものとか。話題は初出であるからか、そちらに行ってしまっているが、自分にとっては、表題作のその後のほうが気になるのだが・・・。さらなる書き直しがないとしても、何故ここにきて、短編集の表題にするのやら。今さらに「蛍・納屋を焼く・その他の短編」は、何故「蛍」でも「納屋を焼く」でもなくて、中途半端なタイトルになっていたのかが窺い知れる。

結局のところ、この人、執筆した作品を音楽的に考えているのかね?昔売れた曲を、新しく出たヒット・アルバムのメンツで録音し直すようなことを、ジャズ・ミュージシャンなんかよくやるじゃないのさ...。あんな感じじゃないのかね。
2009.11.08.
以前とは行動パターンが少し変わってしまった。以前は早めに出かけて夕方には帰ってきていたのだが、昨日は夕食のために銀座に出て底をついていた普段飲みのワインを買ってきた。街中が少しクリスマス飾りになってきて、雰囲気がよくなってきた。

京橋の明治屋のお向かいにあるパイロットのビルに、PEN STATION というMuseum & Cafe があるのだが、これが気になるのだ。1Fがカフェで2Fが万年筆のミュージアムなのだが、とても雰囲気がよさそう。ニュー・ヨークのターミナル・ステーションはペンシルヴァニア・ステーションだからPenn Station と表記するが、まあシャレなのかね?上手いネーミングだとは思う。
さて、六花亭のおやつ屋さんというお取り寄せがあって、カミサンのお気に入りなのだが、これが夏は中断されてしまうのだ。それが、再開されたので、とりあえず11月のおやつ屋さんを注文していたのだが、これが昨日届けられた。今回はりんごのシフォン入り。

それなのに、昨日はクリスピー・クリーム・ドーナツも買ってきてしまった。もう、あまり並んでないのね。並んでいるとくれる試食用も、食べる余裕がなかったので、小袋に入れてくれた。オススメ通り、電子レンジで8秒ほどチンして食べると、確かに美味しい。
さて、ワインはお手ごろな安古ボルドーが4本手に入った。ちょいと嬉しい。左から、コート・ド・ブールのシャトー・フルール・メリゴ、1996年。次が、サンペドカステスという地域のプレスティージュ・ド・シャトー・カブラン、1998年。かなり上流の方にある地域。この2本は今年の3月にも飲んでいる。カブランはチュヌバン・セレクションとか言っていたもので、まあ悪い印象は持っていない。3本目は、シャトー・デュ・ロー、2000年。グラーヴ・ド・ヴェールのAOC。サンテミリオンのリヴルヌの対岸あたり、メルロー単一品種らしい。これは相当に楽しみ。一番右は、メドックのシャトー・トゥール・ド・ロワラック、2001年。おそらくどれも飲み頃だろう。まあ、ワインの会で飲むものと比べると、ゼロが一つ少ないわけだが、この辺だと案外美味しかったりするのさ。
2009.11.03.
忙しいだの言っておいて、遊ぶことは遊ぶ。というか、こういうときこそ、プライヴェートで話せる友人の存在とかが大事なのかもね。結局、どこの職場はタイヘンだの、誰が入院しているだの、そういった話題が多くなってしまうが、まあ飲んでくっちゃべって、さっと帰ってくる、・・・これでしょ。昨日はドタキャンも入ってしまい、2人でオジャマして、3人で3本を空にしてしまったが、昨日のメインは97年のラトゥール、さすがに素晴らしい香りとお味。01年のパプ・クレマンも悪くなかった。もう1本、ナパ・ヴァレーのヤツも超美味ではあったが、相手が悪い。少し軽く感じてしまったが、どうして大したものだった。3本とも大当たり。自分が持ち込んだ95年のカノンは次回に持ち越し。昨日は午後から頭痛がしていて、あまり長い会にならなかったのは、実は有り難かったのであった。タクシーで帰ってきて、即寝。翌日も全身が痛んで動けないので、まさか新型インフルではと思いつつ、熱はない。・・・寝ているしかないか。
2009.11.02.
猛烈なスピードで時間が流れ、猛烈に動き回っている日々が続いている。土日は江東区の南部地域の住居表示変更に対応するため、基幹系システムの担当者もSEも全員出勤状態で臨んだ。どうも組織の中には当事者意識が薄い人々がいるようで、腹立たしいこともあったが、一応無事にいったようだ。ここのところ、システムはトラブル続きの上、複数の職員の子どもさんが新型インフルに感染してしまい、バタバタがもの凄いので、親父様のお見舞いもロクに行けていない状態なのである。退院した直後にまた入院して、またすぐに退院して、などという状況なので、オフクロ様はタイヘンだろうが、この状況ではね・・・。

さて、そう言いつつ注文しておいたDVDが何枚か届いた。昨日の日曜日は午前中出勤、それからかっとび成田往復、帰宅後、遅くなることを承知で「天使と悪魔」なんぞ観てしまった。超面白かったが疲れた。結局カミサンも自分も食欲が失せてしまい、珍しく夕飯抜きで寝てしまった。

もう一枚「映画監督って何だ!」は結局まだ観る余裕がないのだが、こちらは自分がエキストラで出ているというだけ。そのうち観たいものだ。
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